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弁膜症

 動脈硬化を主とする成人病の増加並びに平均寿命の延長により大動脈弁疾患、特に大動脈弁狭窄症は年々増加しています。大動脈弁疾患の手術は当センターの開心術の約 13 ~ 15% を占め、年間 60 ~ 70 例が施行されており、大動脈弁狭窄症に対する弁置換術はその内の 80% に及んでいます。大動脈弁置換術の対象となる患者さんの大半は 70 歳以上の高齢者です。慢性の心房細動などの不整脈を合併してない限り、生体弁による弁置換術を施行することによって術後のワルファリンによる抗凝固療法を回避するようにしております。現在の生体弁の耐用年数は 10 年から 15 年とされており高齢者の QOL を十分満足することが可能と思われます。一方、 60 歳代以下の患者さんに対しては機械弁による弁置換術を施行しています。現在使用している機械弁は有効弁口面積の大きな弁であり、患者さんの運動耐用能を十分に満足可能にするものと考えております。ワルファリンは催奇形性を有するために若い女性に関しては投与が難しい薬剤です。我々の施設では過去 5 年間に再手術という理由だけで死亡した症例はありません。再手術に際しては十分な準備検査を施行することにより安全な手術が可能と考えておりますので、弁置換を施行せざるを得ない若い女性に関しては第 1 選択を生体弁置換とし、十分な外来経過観察の上でしかるべき際に機械弁による弁置換術を行う方針としています。

 大動脈弁閉鎖不全症に対しては、弁置換術と自己弁温存による弁形成術を症例を十分検討の上施行しています。対象としては閉経前の出産を希望する女性や活動的な男性、壮年期の男女などで比較的心機能の保たれている症例に適応があるといえます。形成術に関しては遠隔期に逆流の増加していく症例もありますので当センターにおいて十分な経過観察を行っております。

 大動脈弁疾患において手術を施行した患者さんに関してですが、基本的に 6 ヶ月後および 1 年後に必ず心エコー検査による経過観察を行っております。また、自己弁温存による弁形成術および生体弁置換術に関してはその後 1 年に一回の心エコー検査を施行し、機械弁による弁置換術に関しては 2 年毎の心エコー検査による評価を行っております。

手術の様子を動画でご覧になれます。

僧帽弁疾患

 僧帽弁疾患は、閉鎖不全症と狭窄症がありますが、現在はご承知のように閉鎖不全症の割合が多くなっております。当科では循環器医療センター開設当初より患者様の QOL の向上を第一に考え、閉鎖不全症に対する弁形成術を積極的に取り組んで参りました。閉鎖不全症の原因は、変性から虚血性まで様々で、原因や弁の状態等によって手術手技も変わってまいります。当院の優秀な循環器専門医の心エコー所見とこれまで蓄積した豊富な手術経験をもとに、術前より内科医、放射線科医も含めて一例ごとに緻密な手術戦略をたて、治療を行っております。ちなみに2006年度の僧帽弁手術症例数は77例で、そのうち単独僧帽弁症例は、55例、連合弁膜症に対する手術22例で、手術死亡、入院死亡ともに認められませんでした。今後も皆様に満足して頂ける医療サービスが提供できように研鑽を積んで行きたいと思います。

手術の様子を動画でご覧になれます。

大動脈瘤外科治療について

 当院における大動脈瘤の手術成績は徐々に改善してきています。この理由のひとつには、術前の患者さんの身体状況を詳細に把握できるようになったことが挙げられます。負荷心筋シンチグラム、頚部 MRI 検査は、冠動脈や頚動脈のスクリーニングのためのルーチン検査としており、異常があれば、冠動脈造影検査、脳血流シンチグラムを追加検査しています。また、胸部大動脈瘤では MRI や CT にて手術中の脊髄障害予防のための Adamkiewicz 動脈の同定を行っています。このように十分な情報を取得し、十分に手術方針を検討するために、ご紹介していただいた患者さんに対して、さらに当院で精査を目的に術前に入院していただくことがあります。このため紹介から手術まで日数がかかることがありますが、安全な手術のための方針ですのでご了承お願いします。

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