虚血性心疾患
虚血性心疾患
虚血性心疾患とは、心臓を栄養する血管(冠動脈)が細くなったりつまったりすることによって、心臓に十分な血液が供給されなくなることによって生じる病気です。原因としては、動脈硬化や冠動脈の痙攣、血栓等による塞栓等が挙げられます。 最近、わが国では冠動脈病変に対する PCI( カテーテルインターベンション ) の普及・進歩に伴い内科的治療症例が増え 、 PCI 禁忌例や不成功例などが外科的冠動脈バイパス術の適応となってきています。
1. 冠動脈バイパス術
手術の様子を動画でご覧になれます。
当科では、外科的治療症例に 対して積極的に OPCAB (off pump冠動脈バイパス術)を行なっています。その方法は人工心肺を使用せず心臓が拍動した状態で冠動脈バイパス術を行います。そのため技術的にはより高度なものが要求されますが、人工心肺使用に伴う合併症が回避でき、尚且つ手術適応が拡大されるので非常に有用な方法です。当科においてもOPCABの比率は年々増加し2007年度は冠動脈バイパス術の全例がこのような方法で行なわれています。この手術は、脳梗塞、腎機能や肺機能障害などの臓器障害のある患者さんに対してもより安全に手術が行え、術後の回復がより早いことが挙げられます。
2. 心筋梗塞後の後遺症(合併症)に対する外科的治療
a. 心室中隔穿孔
心筋梗塞発症より数日後に、梗塞により脆弱となった心室中隔が裂け左→右シャントが生じ、急性心不全となる疾患です。以前は穿孔部周辺が非常に脆弱なため、心筋梗塞発症後 3~4週経過し梗塞部周辺組織が瘢痕治癒してからてから手術を行なう方がよいとされていましたが、excluding techniqueを持ちいることで急性期においても積極的に左心室再建(Komeda-David法)が行なわれ、手術成績も向上してきています。
b. 急性心破裂
心筋梗塞後の急性心室破裂は非常に重篤な合併症で、心室中隔穿孔や乳頭筋断裂に比較して 10倍も高いです。心原性ショックや心タンポナーデとなり直ちに手術を行なわなければなりません。血液の漏出が軽度な症例であれば圧迫のみで止血が可能ですが、その他の症例では梗塞部を切除して残存心室筋を縫合しなければなりません。
c. 心室瘤と虚血性心筋症
心室瘤や虚血性心筋症に対する手術は、血行動態が障害され内科的治療の困難な心不全症例や血栓塞栓症を繰り返す症例や難治性不整脈症例に対して行わます。以前は左心室の縮小形成術として Dor手術が行なわれてきましたが左室が縮小後に球形になるため、最近ではSAVE 手術(septal anterior ventrisular exclusion)を行なう事により本来の形態に縮小形成でき、良好な成績を得られています。