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岩手医科大学心臓血管外科専門医カリキュラム

1. 岩手医科大学心臓血管外科専門医カリキュラム

岩手医科大学心臓血管外科専門医カリキュラムの目的と使命は以下の通りです。

1) 専攻医が心臓血管外科学に関する知識・技能・態度と高い倫理観を備えることにより、国民に信頼され、標準的な医療を提供できるプロフェッショナルとしての自覚と誇りを持った心臓血管外科専門医となること。
2) 基本領域専門研修である外科専門研修プログラムと緊密に連携し、サブスペシヤルテイー領域である心臓血管外科専門修練へのスムーズな移行を支援すること。
3) 岩手医科大学建学の精神である「誠の人間」の育成を通して社会の進歩、国民の健康・福祉の増進に寄与すること。

岩手医科大学心臓血管外科専門医カリキュラムの特徴

1) 日本国内でも有数の手術症例数
岩手医科大学は心臓血管外科修練において手術経験としてカウントされるNCD登録手術数が毎年500例を超えており、豊富な症例数を背景に専攻医の執刀機会、第一助手経験機会の確保に努めています。
2) 大学病院ならではの偏りの無い多彩な手術術式
心臓血管外科専門医修練施設群は全体で次の4領域を網羅することが求められています。①先天性心疾患、②後天性心疾患(大血管も含む)、③末梢血管(腹部大動脈瘤や閉塞性動脈硬化症など)、④血管内治療(ステントグラフト内挿術など)。岩手医科大学は新生児から超高齢者までのあらゆる疾患、手術に対応しその実績がありますので専攻医はこれら4領域すべての経験が可能です。
3) 日本全国に広がる多症例施設との連携
自施設だけでも上記4領域を十分に経験できますが、専攻医は多くの執刀医の手術や多施設の管理を経験することで幅広い知識や技術を習得することができます。岩手医科大学は近隣では岩手県立中央病院、東北大学、弘前大学など、先天性領域では宮城県立こども病院、静岡こども病院、東京大学、岡山大学、後天性領域では川崎幸病院と修練施設群を形成し、専攻医が幅広く修練できる機会の確保に努めています。修練施設群全体での手術症例数は年間3500例であり、多くの手術経験が期待できます。
4) 地域枠奨学生の義務履行に対する、個別対応による早期専門医取得に向けた支援
岩手医科大学は岩手県保健福祉部医療政策室と連携しながら、心臓血管外科修練の特殊性を考慮いただき、専門医取得を最優先事項とし、奨学生の義務履行に対して猶予期間の延長も含めて柔軟に個別対応していただけるよう努めています。

2. 岩手医科大学心臓血管外科専門医カリキュラムの修練施設群

岩手医科大学(基幹施設)と連携施設(11施設)により修練施設群を構成します。本修練施設群では46名の心臓血管外科専門医が在籍しております。当院では4名の心臓血管外科専門医が在籍しており、毎年2名の専攻医を募集し、指導に当たります。

基幹施設

  岩手医科大学附属病院

連携施設(あいうえお順)

  秋田大学附属病院(秋田県)
  岩手県立中央病院(岩手県)
  岡山大学附属病院(岡山県)
  川崎幸病院(神奈川県)
  財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院(福島県)
  静岡県立こども病院(静岡県)
  東京大学附属病院(東京都)
  東北医科薬科大学附属病院(宮城県)
  東北大学附属病院(宮城県)
  弘前大学附属病院(青森県)
  宮城県立こども病院(宮城県)

3. 専攻医の受け入れ数について

本専門医カリキュラムの施設群全体の年間手術総数は3500例で心臓血管外科専門医は46名おります。当院は年間手術数500例で心臓血管外科専門医は4名おります。専攻医1人あたりの経験症例数を確保し、より充実した修練を積んでもらうため、本カリキュラムの募集専攻医は毎年2名とします。

4. 心臓血管外科修練について

1)修練の開始

心臓血管外科修練の開始は外科専門研修3年間が終了してから開始する①通常型と外科専門研修2年経過時に開始する②1年連動型、1年経過時に開始する③2年連動型、の3通りがあります。一般外科の研修が早期に終了できる見込みがあり、かつ心臓血管外科修練が前倒し可能な場合は連動型を考慮できますが、外科専門医取得に3年程度見込まれる場合や、心臓血管外科修練を前倒ししても、経験症例数があまり見込めない場合は通常型とした方が無難と思われます。

2)修練の期間

心臓血管外科専門修練は開始後3年から9年以内に所定の手術経験数と学術的実績(学会参加や論文執筆)、off the job training実績(30時間以上)などを満たすことが求められ、修練終了後5年以内の認定試験の合格をもって初めて専門医とみなされます。修練開始から9年以内に所定の実績が満たされない場合や修練終了後5年以内に認定試験に合格しない場合は、すべての実績が無効となります。当カリキュラムでは所定の期間内に修練が完遂できるよう専攻医を支援していきます。

3)年次毎の修練計画と到達目標

個々の専攻医に応じて計画を立案していきますが、5-7年をかけて専門医を取得できるようにしていきます。年次毎のおおよその目標、方略は以下の通りです。

1-2年目
目標

心臓血管外科の診断、治療に必要な基本的知識、技術を習得し実施できる。
患者、家族の心情が理解できる。
チーム医療を理解し実行できる。
学会発表や論文執筆ができる。

方略

担当医として病歴、理学検査、画像検査を通して病態、手術適応、手術戦略を理解する。
軽症例の第一助手を経験する。指導医のもと開閉胸、開閉腹、カニュレーション、末梢血管露出、グラフト採取などの基本的手技を実施する。
病状説明と同意取得に関わり患者、家族の話を傾聴する。
多職種カンファレンスに参加し、周囲とコミュニケーションをはかる。
学会参加、発表、論文執筆をする。

3-4年目
目標

心臓血管外科の治療計画の策定と軽症例の執刀ができる。
手術リスクの評価と危険察知、回避ができる。
修練医を教育できる。

方略

担当医として手術適応判断、リスク評価、治療計画の策定、周術期管理に主体的に関わる。
重症例の第一助手を経験する。指導医のもと軽症例の執刀を実施する。
臨床、学術活動において修練医を指導する。

5-7年目
目標

心臓血管外科中等症例の執刀ができる。
患者・家族が病状を理解し、自己決定できるよう説明、同意取得ができる。
術中、術後合併症を予測し、適切に対処できる。
医療事故に適切に対処できる。

方略

指導医のもと中等症例の執刀を実施する。
主治医として患者に接し、病状、手術内容、リスク、合併症について説明、同意を取得する。
術前リスク評価をもとに術中術後合併症を早期に察知し適切に対処する。
医療事故を回避する方法を学び、それに遭遇した場合は良心に従って適切に対処する。

専攻医の希望専門領域や、人員配置の状況などに応じて、連携施設への出向を1回または複数回に分けて1-3年程度予定しています。下図に通常型、連動型の1例を示します。他に、奨学生の1例も提示します。

通常型の心臓血管外科修練の1例 *通常型の心臓血管外科修練の1例

連動型の心臓血管外科修練の1例 *連動型の心臓血管外科修練の1例

奨学生の心臓血管外科修練の1例 *奨学生の心臓血管外科修練の1例

4)週間スケジュール

CICU回診 毎朝8:00~8:30
循環器朝カンファレンス 毎朝8:30~8:45
先天性心疾患カンファレンス 月曜16:30~
Off the job training 水曜7:00~8:00(自由参加)
心臓血管外科手術症例検討会 木曜7:30~8:30
教授総回診 木曜8:45-9:15
成人先天性心疾患カンファレンス 木曜16:00~
循環器内科合同カンファレンス 木曜17:00~

5)年間スケジュール

3月 心臓血管外科専門医カリキュラム専攻医登録申請
岩手医大心臓血管外科専門医カリキュラム管理委員会
心臓血管外科学会参加(発表)
4月 心臓血管外科修練開始
8月 修練修了者:専門医認定審査申請・提出
10月 日本胸部外科学会参加(発表)
12月 修練修了者:専門医認定審査(筆記試験)
2-3月 専攻医:修練目標達成度評価報告と経験症例数報告(年次報告)
指導医・指導責任者:指導実績報告

6)専門医申請に必要な手術経験や実績

術者として30例以上の手術を行う
第一助手として50例以上を行う
第二助手を含めた総点数を500点以上とする
査読制度のある全国誌以上の論文3編以上(筆頭論文1編以上)
全国規模の学術総会で3回以上筆頭演者として発表
日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、日本血管外科学会に計3回以上参加
専門医機構が認めるセミナーに3回以上参加
専門医機構が認める医療安全講習会を2回以上受講
Of the job trainingを30時間以上
心大血管手術における体外循環および補助循環技術参加型実習5例

旧専門医制度における臨床経験評価方式
*旧専門医制度における臨床経験評価方式(新専門医制度では術者として30例の執刀を求めている)

難易度

5. 各種カンファランスなどによる知識・技能の習得

1) 基幹施設および連携施設それぞれにおいて医師および多職種スタッフによる治療および管理方針の症例検討会を行い、専攻医は積極的に意見を述べ、スタッフの意見を聴くことにより、具体的な治療と管理の論理を学びます。
2) 循環器朝カンファレンス:当日の手術症例のプレゼンテーションを通じてプレゼンテーションやコミュニケーション能力を培います。
3) 循環器内科合同カンファレンス:循環器内科や関連施設との合同カンファレンスを通じて、手術適応や術前評価、手術術式などの論理を学びます。
4) 小児循環器(成人先天性)カンファレンス:小児循環器や成人先天性心疾患の手術適応、術前評価、術式選択、周術期管理など症例を通じて学びます。
5) 週1回開催されるOff the job trainingを通じて、手術器械の操作、運針、手術補助の理論や技術を学びます。
6) 院内や学会などで開催される医療倫理、医療安全、感染対策などの講習会を通じてその方法論や実際を学びます。

6. 学問的姿勢

専攻医は医学・医療の進歩に遅れることなく常に研鑽、自己学習することが求められます。日常的診療から浮かび上がるクリニカルクエスチョンを日々の学習により解決し、今日のエビデンスでは解決し得ない問題は臨床研究に自ら参加もしくは企画することで解決しようとする姿勢を身につけます。学会には積極的に参加し基礎的あるいは臨床的研究成果を発表します。さらに得られた成果は論文として発表し、公に広めるとともに批評を受ける姿

7. 医師に必要なコアコンピテンシー、倫理性、社会性

1) 医師としての責務を自律的に果たし信頼されること(プロフェッショナリズム)
2) 患者中心の医療を実践し、医の倫理・医療安全に配慮すること
3) 臨床の現場から学ぶ態度を習得すること
4) チーム医療の一員として行動すること
5) 後輩医師に教育・指導を行うこと
6) 保健医療や主たる医療法規を理解、遵守すること

8. 施設群による修練カリキュラム

本カリキュラムでは岩手医科大学を基幹施設とし、全国の連携施設とともに修練施設群を構成しています。専攻医はこれらの施設群をローテートすることにより、多彩で偏りのない充実した修練を行うことが可能となります。施設群における修練の順序、期間などに関しては、専攻医数や個々の専攻医の希望、奨学金の有無、各連携施設の状況を勘案して、岩手医科大学心臓血管外科専門医カリキュラム管理委員会が決定します。

9. 修練の評価

修練中の専攻医と指導医の相互評価は施設群による修練とともに専門医カリキュラムの根幹となるものです。修練の年次毎にコアコンピテンシーと求められる知識・技能の習得目標を設定し、その年度終わりに達成度を評価します。このことにより基本から応用へ、さらに専門医として独立して実践できるまで着実に実力がつけられるよう配慮しています。

10. 専門医カリキュラム管理委員会

基幹施設である岩手医科大学附属病院には、専門医カリキュラム管理委員会と専門医カリキュラム統括責任者を置きます。連携施設群にはカリキュラム連携施設担当者とカリキュラム委員会が置かれます。岩手医科大学心臓血管外科専門医カリキュラム管理委員会は、カリキュラム統括責任者、副統括責任者、連携施設担当者、他職種代表者で構成されます。カリキュラムの管理、改良に加え、専攻医の採用や配置および終了判定、指導医への指導などを行います。カリキュラムの改善に向けての会議には専門医取得後の若手医師代表も加わります。

11. 専攻医の就業環境

1) カリキュラム基幹施設および連携施設の責任者あるいは担当者は専攻医の労働環境改善に努めます。
2) カリキュラム統括責任者または修練指導医は専攻医のメンタルヘルスに配慮します。
3) 専攻医の勤務時間、当直、給与、休日は労働基準法に準じて各施設の施設規定に従います。

12. 終了判定

修練期間における年次毎の評価表および実施経験目録に基づいて、知識・技能・態度が専門医試験を受けるのにふさわしいものであるかどうか、症例経験数や学術実績などが専門医機構の求める内容を満たしているかどうかを3月にカリキュラム管理委員会において評価し、カリキュラム統括責任者が終了の判定を行います。

13. 修練の休止、中断、カリキュラム移動

岩手医科大学心臓血管外科専門医カリキュラムでは専攻医のキャリアパスの観点から、国内外の留学や産休・育休、カリキュラム間での移動に関して専攻医の希望と照らし合わせ、柔軟に対応します。

14. 専攻医の採用

岩手医科大学心臓血管外科専門医カリキュラム管理委員会は毎年2-3月に専攻医を募集します。カリキュラムへの応募者は、カリキュラム統括責任者(小泉淳一)宛に専攻医登録申請書(様式2)、医師免許証の写し、および履歴書を提出してください。詳しくは①電話による問い合わせ(019-613-7111内線6411)または②メールでの問い合わせ([email protected])をお願いします。書類選考および面接を行い、採否を決定し本人に通知します。

専攻医登録申請書(様式2)

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